公益財団法人日本股関節研究振興財団理事長の別府諸兄先生から、コラム執筆の依頼がありました。別府先生と手の外科を通して永年親しくしていただき、また妻を交えてのお付き合いがあり、股関節の専門家ではないのですが、引き受けさせていただきました。
　私にとって、股関節と言えば妻が最近人工股関節置換術を受けたことです。わが家では10年ほど前から毎年正月に夫婦そろってPET-CT検査を受けているのですが、膝や股関節は特に異常は指摘されていませんでした。ところが日課としている夜の犬の散歩の途中、妻が「股関節に痛みがある」というので、レントゲン写真を撮ってみましたところ、中等度以上の変形性関節症であることが分かりました。PET-CTの目的はあくまでもガンの早期発見であり、OAは見過ごされてしまうのかもしれません。その後も痛みが強いので、前方アプローチによる人工股関節置換術を受けました。
　驚いたことに、妻は手術翌日から歩き始めていました。「ダメだよ」と言っても「もともと疼痛には強い体なので自然に歩けた」と言って抜糸の前に退院し、購入していた杖も一切使うことはありませんでした。
　一方で、日本にとって大切な海外のVIPを某病院で人工股関節置換術を受けるべく紹介しました。同様に前方アプローチで、術後理学療法士の指導通りにリハビリを真面目に受けていましたが、数週間後に縦にひび割れが生じ、ワイアリングを2カ所に受けました。また歩いているうちに、締結した間に横骨折が生じて再手術を余儀なくされてしまいました。
　同じような手術をして、翌日から歩くような無茶をしても結果オーライなこともあれば、ちゃんと医師の指導通りにしていても再手術になったりするのは何故でしょうか。技量に限らずツキや運もあるのかもしれません。しかし私が入局した1977年から考えると今の人工股関節置換術の進歩は目覚ましいものであることは間違いありません。これまで股関節手術に携わられた医療者、機械屋さんに感謝感謝です。