大久保 康一
公益財団法人日本股関節研究振興財団 理事
第7回Hip Jointコラム(2016年4月4日)で私の股関節と剣道という題目で報告いたしましたが今回はその後の経過です。→リンク
第7回Hip Jointコラム(2016年4月4日)で私の股関節と剣道
第1報の終わりに、いずれ人工股関節置換術を受けることになるでしょうと記載いたしましたその通りになりました。第1報後、楽しく無理せず週2回の稽古を続けておりました。しかし徐々に右股関節痛が増強し2020年2月ごろは稽古の前に坐薬を入れて稽古しておりました。稽古中は痛み感じませんでしたが、体育館から駐車場に向かう200mがつらくなりました。その後コロナ影響で剣道ができなくなりましたが、歩行時右足に体重かけると痛みを感じるようになり、時にゴリ!と音がいたしました。コリャダメダ!ということで人工股関節置換術を2020年7月31日慈恵医大第三病院大谷卓也教授の執刀の元で手術を受けました。
手術前日入院、全てを先生方にお任せし、感染や脱臼そして予測できない事が起きないように祈り、まさに【まな板の鯉】といった心境でした。術後当日は、ペインコントロールがうまくいっているせいか、動かさなければ痛みは感じませんでした。
翌日、さあ車いすに乗りましょうと言われ、え! もう車いすですか、驚き! でした。日曜日はリハビリテーションが休みでホットいたしました。本格的なリハビリテーションは術後3日から開始、痛みは以前のような股関節軟骨の摩耗による痛みではなく、股関節周囲の痛みと内転筋突っ張り感を伴う痛みでした。
4日目、右下肢を股関節伸展0度にすると痛く、膝を曲げて股関節を軽度曲げると楽になり、ホットいたしました。歩行器での歩行開始、その午後37.6度発熱、嫌な感じ。カロナール2錠内服し、氷枕いたしましたところ翌日の5日目の朝には下熱いたしました。氷枕気持ちいい! 痛みは股関節自体の痛みより周囲の特に臀部の突っ張り感に伴う痛み、そしてなぜか内転筋の突っ張り感と痛みがありました。私の場合、術中股関節が外旋して関節が固くがちがちの状態で、それを矯正後、強固に外旋筋群を縫合したことや、軟部組織を切離後再縫合したことによる突っ張り感と痛みです、との説明を先生から受け、納得いたしました。軟部組織の修復には少なくとも2~3週間かかるが、動かさないと関節が固く(拘縮)になる。そこで理学療法士(PT)の指導のごとく痛みの出る少し前まで動かすように心がけました。
5日目 片杖歩行開始、創周囲の腫脹改善いたしましたがしかし疲れる! パソコンしても長く続かず、すぐに嫌になりました。
6日目 階段歩行可能。股関節伸展0度での痛み消失。大腿四頭筋筋力低下、こんなにすぐに起こるとは予想外で、ベッド上での自主トレーニングを心掛けました。
7日目 大谷先生が抜糸、創もきれいですのでシャワーどうぞ。エーウソ! そんなに早いの。さすが感染が怖いので術後9日目にシャワーを浴びました。
8日目 まだ股関節周囲の突っ張り感と痛み残存。
9日目 シャワー浴びる。アー気持ちよか!
10日目 朝術後はじめて空腹感あり。肉が食べたいな! 1本杖利用するがなくても歩けるようになりました。
11日目 杖なしで歩けるが股関節周囲突っ張り感と痛み残存。屈曲80度可能、それ以上曲がると痛い。しかしベッドからスーと立ち上がれるようになり、いろいろな身の回りの動作が早く容易になりました。しかし、右足に補助棒を利用しても靴下をはけない。
12日目 朝7時45分 股関節班(大谷、川口、原田、雨谷先生)の早朝回診あり。股関節の動きも良く、リハビリテーションも順調に進んでおります。退院後2~3ヵ月金トレーニングは脱臼の恐れあるので控えてください、普通の生活を、との指導あり。明後日退院ですよと。すぐに退院モードに! 右臀部の突っ張り感と痛みはだいぶ改善してきました。
13日目 退院前日の最後のリハビリテーション。仰向けで股関節、膝関節0度位で支えなく右下肢挙上30cm可能となる。退院後のリハビリテーション自主トレーニングの要領を指導される。リハビリテーション理学療法士相内先生いろいろとありがとうございました。そして、今後の股関節に痛みのない生活に対する期待、喜びが沸いてきました。そして7-8ヵ月すると、また剣道の素振りができるか楽しみにしています。
今回は医師と患者さんとの立場が逆転し、大変に良い経験になりました。自分自身にとって、もっと、もっと外来でも、入院でも患者さんと接する時間を取らなくてはいけないと痛感いたしました。
人工股関節置換術に関しては、30年前に股関節財団前理事長の故伊丹康人先生と人工股関節置換術(JOHP)を行っていた時代と大きく様変わり、人工関節の素材にしても、手術法にしても、後療法にしても、抗菌薬の使い方に関しても、また医療の関わる環境に関しても、大きく進歩、発展したことを身もって体験いたしました。2週間貴重な経験でした。