明けましておめでとうございます。私は公益財団法人日本股関節研究振興財団で理事長をしております別府諸兄です。当財団は故伊丹康人先生が設立して36年が経過し、この間、股関節研究をされる先生方への研究助成、海外・国内研修のみならず、一般の皆様への正しい股関節の知識の普及啓発を行っております。
この度は、「赤ちゃんの股関節大丈夫ですか?」というタイトルで、2名の小児股関節専門の先生にお話しをいただき鼎談を行いました。さて、乳幼児期の代表的な股関節疾患である発育性股関節形成不全とはどんな病気でしょうか? 乳幼児期の主な股関節疾患の1つに、発育性股関節形成不全があります。この疾患は日本の変形性股関節症の主な原因の1つであり、早期に発見されると治療は可能でありますが、この時期の股関節形成不全を見落としてしまうと、変形性股関節症になり症状が進行し、場合によっては人工股関節となってしまう可能性があります。また、欧米では1990年代からDeveloping Dysplasia of the Hipの頭文字をとってDDHと呼ばれています。
発育性股関節形成不全について図1を用いて説明いたします。イラストの一番左の股関節は正常の状態であり、次のイラストは臼蓋、つまり股関節の受け皿部分の作りが浅く亜脱臼・脱臼しやすい状態です。そして、次のイラストはやや脱臼している「亜脱臼」、一番右のイラストは「完全に脱臼」している状態です。この様な状態を「発育性股関節形成不全」と言います。2010年、神宮寺先生らの日本の変形性股関節症の疫学的調査によりますと、この発育性股関節形成不全によるものが81%にのぼります。変形性股関節症の予防には、乳幼児期の脱臼そのものを減らす事と、できる限り早期に見つけることが大事であります。
そこで、この度ご鼎談いただいた慈恵医科大学整形外科学講座教授大谷先生には、「乳児の股関節脱臼検診の学会としての取り組み」、そして藤田保健衛生大学・東京医科大学客員教授、信濃医療福祉センター理事長の朝貝先生には「発育性股関節形成不全の最も重要である予防について」をお話いただきました。
当財団としましては、出産される予定のご家族に図-2のステッカーを利用していただき、掲載されているQRコードの「小児と股関節」の当財団特設ページより、この「赤ちゃんの股関節大丈夫ですか?」という鼎談のYouTubeをお聞きいただき、それに関する情報を共有していただけたらと考えています。