花之内 健仁
大阪産業大学 工学部 機械工学科 医工学研究室 教授
大阪産業大学 工学部 機械工学科 医工学研究室の花之内 健仁(はなのうちたけひと)と申します。自己紹介からの話ではなはだ恐縮ではございますが、私は、医学と工学の接点で貢献・活躍できる医師を目指し、卒後、整形外科医、特に関節外科を専門として活動しながら医工学の研究活動をしてまいりました(現在も大阪は羽曳野市にあります、運動器ケア しまだ病院にて、人工関節の手術、股関節鏡の手術を担当しています)。平成19年度には当財団の研究助成を頂いたこともございます。研究分野は、3Dプリンタ・バイオプリンタ・センシング実験機器・バイオメカニクス・医用画像解析・医療・ヘルスケア機器開発など機械工学と親和性の高い領域で多岐にわたるのですが、今回は股関節の手術を受けられる予定の患者様もしくは受けられた患者様に対する自助具の開発のお話をさせてもらいます。
自助具とは、読んで字のごとく、身の回りの動作がより便利に、より容易に自分で行えるよう工夫された道具のことを指します。では、“足の爪が自分で切られない“とはどんな状態のことなのでしょうか?
イメージを次に示します。

手を足の方に持って行っても、足まで届かない状態のことをいいます。いろんな原因が考えられるのですが、その1つとして、股関節の病気があります。股関節の病気で股関節がうまく動かせないことから手が届かなくなります。関節外科医として修練していた時に、実は人工股関節の手術をした患者様でも自分の足の爪が切られない方がいることを知りました。調査しますと凡そ15%程度もいることがわかりました(3Dプリンター×テーラーメイド医療 実践股関節手術 金芳堂 2016年)。関節自体は人工関節手術によって動きがスムーズになるのに、手術までの待機期間が長いことからおしりの筋肉が伸びにくくなってしまっていて、曲げようにもそれが邪魔してしまって曲げられない。そんな状況が起こってしまうのです。

そのような患者様は、手術が終わったあとでも、ご家族の方に切ってもらうなど、不自由をなさっていると聞き、なにかしらの助けになればと考えたのが、今回ご紹介する自助具です。
コロナ禍の最中でしたが、2020年実用新案(特許に関連した知財の一つ)を取得しました。通常の「電動爪削り器(ネイルケアに使用する物)」と「突っ張り棒(100均で購入可能)」と、それらをつなぐ「部品」でできています。突っ張り棒の1つを足の甲に設置し、他方に固定されている電動爪切りを棒を操作することによって自在に動かすことが可能になります(下図はその例)。
また、オプションで、市販の内視鏡カメラを装着して、スマホを介して、削っている部分を
拡大してみることが可能となります(下図)。
まだ、製造開発業者様をみつけることはできておりませんが、自身の研究室で掲載したところ、“ほしい!”というご反響も頂きました(もし、ご興味を持っていただける業者様がおりましたらお声掛けを宜しくお願い致します)。
このように常に医師として臨床現場で役に立つ医療・ヘルスケア機器開発を含めた医工学研究をしていきたいと思っております。今後ともよろしくお願い申し上げます!
このような記事掲載の機会を頂きました財団に対しまして厚く御礼申し上げます。