２年ほど前、本コラムの第84回原稿「お笑い番組での人工股関節の話題」において、重症の変形性股関節症で手術を勧められているお笑い芸人S氏の話を書かせていただいたのですが、その後、意外な展開になったということで、書かせていただこうと思います。
　2022年8月のテレビ番組で、激しい股関節の痛みのため整形外科を受診したところ関節軟骨がほとんど無い重症の変形性股関節症と診断され、11月に約１か月休んで名医による人工股関節置換術を受ける予定だという話があったことを紹介し、無事に復帰して、世間一般に人工股関節の優秀な点を広めてくれることを本財団の関係者としても期待しているということを前回書かせていただきました。ところが、その後少ししてから、件のお笑い芸人S氏が年末の番組に出て、「ゴッドハンドと言われる施術師と出会い、股関節の痛みが消えた、股関節手術は回避できた」という驚きの発言をしたのです。しかも股関節は触らず、手首や頭のつむじの辺りを触っただけで、股関節に隙間を作り、それによって痛みが消えたと。俄かには信じ難い話ですし、正当な医学的治療で患者さんを治療されている先生方が理事に多い本財団のコラムで紹介する話ではないかと悩んだところでもありますが、、。ただ、S氏は「本来、軟骨が再生されることは絶対ない」とも言っており、これは正しい見解です。おそらく「隙間を作った」というのは姿勢を変えて関節面のアライメントを修正したのではないかと思われますが、とにかくその時は膝を高く上げる膝蹴りの動きまで見せて、驚きの状態でした。その後しばらくは股関節の痛みもなく、コントでの動きも見違えるようだったとの情報もあり、S氏の名前と股関節でネット検索するとゴッドハンドのエピソードばかりが出てくるのですが、、、さらに１年経過したテレビ出演の際には、「股関節の痛みが再発し、ホテルから100m先の仕事場までタクシーを使うほど酷い状態になった」とのこと。こちらの痛み再発の情報は検索してもほぼ出てきません。このような「ゴッドハンド」のみが話題になるネット情報のアンバランスには困ったものだと思っています。
　果たして、股関節の痛み再発に対するＳ氏の次の選択肢は人工股関節手術かゴッドハンドか、気にして追跡しているのですが、現時点ではどちらでもなく、なんと大幅なダイエットのようです。一度ダイエットで20kgの減量に成功してリバウンドして、再度20kg以上の減量を目標にダイエット中とか。無理なダイエットはリスキーなものの、股関節や膝関節の痛みに減量が有効なのは確かであり、最後は股関節手術に頼るにしても、何とか減量で良い状態をできるだけ長く維持してほしいものです。