コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、私たち弁護士の会議もWeb会議が多用されるようになった。特に弁護士会の委員会活動における会議は、ほとんどがzoom等のWeb会議システムが併用される、いわゆるハイブリッド型の会議となっている。
Web会議の多用は、移動時間、交通費や宿泊費等の削減等のメリットがあり、参加しやすさから委員会への出席率が高まるなどの良い効果も指摘されている。
しかし、このような非対面型コミュニケーションにおいては、違和感や疲れ、意見交換の消化不良を度々感じる。空気を読むということができず、共感も生まれにくい状態になっているのではないだろうか。
この点、脳トレを普及した東北大学の川島隆太教授が、同大学の学生の協力を得て行った実験によると、学部や性別が同じで、興味関心が似ている人たちを5人一組にして、学部の勉強や趣味など共通するテーマについて、顔を見ながらの対面とズームなどを使ったオンラインとで、それぞれ会話してもらい、脳活動を比較したところ、顔を見ながら会話しているときは、きちっと脳反応の周波数で同期現象(共感している状況)が見られるものが、オンラインでは、一切見られなかった(朝日新聞2022年1月27日)という。
また、言語情報と非言語情報の情報伝達の違いに関するアメリカの社会心理学者メラヴィアンの法則によると、情報はVerbalで7%、Vocalで38%、Visualで55%が伝わるという。つまり情報のうち言語で伝わるのはわずかに7%で、残りの93%は非言語情報で伝わるということである。
確かに、会議等の意見交換に限らず、我々弁護士が裁判で証人尋問をするような場合や、依頼者から事情を聞き取るような場合にも、言語から得られる情報より、会話時の声の大きさ、間の取り方、表情の変化や、身体的な細かなシグナル(体を乗り出す、視線をそらす、目が泳ぐ、貧乏ゆすりをしている、ふるえている、汗をかいている、顔が上気している等)という非言語的要素から得られる情報の方が、相手方の本音(真実)を読み取るには重要である。
ところがWeb会議の場合は、機器の影響による場合が多いが、聞き取りにくかったり、逆に異様に大きな音声となったり、会話のタイミングが一拍ズレたり、映像が小さいと表情も態度を読み取るのは不可能であるし、顔色も映像の具合で暗めだったり妙に明るかったりする。これでは、我々がこれまで対面による会話で培って来た情報感得手法が全く役にたたない。これが、Web会議で感じる違和感や疲れ、議論の消化不良の正体なのではないだろうか。非対面型コミュニケーションでは得られないものの大きさを感じる。