股関節に関する有識者の方々が、様々な切り口で股関節をコラム形式で解説します。
人工股関節手術を受けた場合のメリットとデメリットを十分理解し納得した上で手術に臨んで頂きたいと思います。
今回はそのデメリットである合併症についてお話しします。合併症には術後数年から数十年後に起こる長期的な合併症と、術中又は術直後から起こる短期的な合併症があります。
長期的な合併症には人工関節のゆるみがあります。ゆるみの原因としては、骨と人工関節の硬さの違いにより接触面に隙間が生じた機械的緩みと、関節の摺動部に使われているポリエチレンの摩耗粉による接触部の骨溶解が生じたゆるみがあります。現在使われている人工股関節は金属材質、表面加工、形状等の進歩により機械的ゆるみを生じにくくなっています。又摺動部のポリエチレンにガンマー線を照射することにより、ポリエチレンの磨耗量は顕著に低下し、骨溶解によるゆるみも激減しました。これらの改良により人工股関節の耐用年数は10~15年から20~30年以上に延びました。人工股関節のゆるみは初期には無症状の事が多いので、骨との接触面に隙間がないか定期的にレントゲン検査し、骨の老化がないか骨粗鬆症のチェックをすることが大切です。
術中術後に起こりうる短期的合併症には以下があります。
担当医より十分説明を受け、合併症とは、特に問題なく行われた手術に生じうる不具合の事であり、手術手技の失敗で生じたものではないという事を十分理解した上で手術を受けられることをお願いしたいと思います。