たとえば「今まで当たり前にしてきたこと、やれていたことがもう出来なくなったらどうしよう」と、そんなことを想像すると誰もが不安になります。不安とは自分に何か悪いことが起こるのでは無いかと感じる、漠然とした気分のことです。日々の生活の中で生じるあらゆる出来事が、不安の対象となります。そして不安は、心にも身体にも変化をもたらします。
しかし、不安を感じること自体は問題ではありません。むしろ不安を全く抱かずに過ごしている方が稀で、人は多かれ少なかれ何かに対して不安を感じているはずです。
徐々に進んでいく老化現象などは、その変化が緩やかなために、私たちは知らない間に受け入れています。しかし思いもかけない障害を煩った時には、「リハビリテーションをすれば、前と同じくらいには回復するかもしれない」ということが頭では理解できても、心はすぐにはついていけません。これからどうしたらいいのだろうと、不安を感じるに違いありません。だから、前向きになれないのは当然です。
こんな時はむしろ、自分自身をコントロールしようとすることを手放します。大切なのは、「肩の力を抜いて不安と付き合う方法を探してみる」ことです。
では、不安を抱えていても、心豊かに自分らしく生きていくためには何をすればいいかを、考えてみましょう。
心と身体は常に密接に関係していて、特に心の緊張は容易に身体に現れます。暗い気持ちの時には身体がズッシリと重たく感じたり、逆に気持ちが晴れやかなときにはスッキリと軽く感じられます。不安なときも同様に、身体に変化が現れます。たとえば呼吸が浅く速くなる、身体が硬くなるといった状態が身体に現れた不安に対する身体の反応のひとつです。
そこでこんな時にはまず「呼吸を整える」「筋肉の緊張をほぐす」というように、身体からアプローチすることで不安と向き合ってみます。
不安を感じている自分に、怒りを感じてしまうこともあるでしょう。複雑な感情がわき上がり、どうしていいかわからなくなってしまい、悲しくなってしまうこともあります。まずはそんな感情が生じている自分、不安を感じている自分をありのまま受け止めます。 感情にいいとか悪いとか価値をつける必要はありません。そして、ゆっくりと「穏やかで明るく優しい」呼吸を、一息ずつ味わうように深く繰り返してみます。同時に、顎や肩の力も抜きます。そして怒りや不安が、深呼吸を繰り返すうちに段々と小さくなってくるのを待ちます。 日々の生活の中で、こんな呼吸法に取り組んでみることで不安をため込まないようにします。
日々の生活の過ごし方、つまり生活リズムが不規則になると、心身に対してマイナスの影響がもたらされます。たとえばやる気がでない、注意力が低下する、眠りが浅くなるなども、生活リズムの乱れが原因になっていることもあります。
睡眠不足になると日中に眠気が残ります。年齢や季節によっても必要な睡眠時間は変化しますので、日中に眠気で困らなければ、長時間必ず眠らなければならないということではありません。よって、決まった時間に寝て、朝はいつもと同じ時間には起きて活動をするというように、睡眠と活動のリズムを整えた規則正しい生活をすることが大切です。
そして、日々の暮らしの中で適度に体を動かす事も大切です。何もスポーツクラブにいかなくても、掃除や洗濯などで身体を動かしてみるなど、暮らしの中で身体を動かせることを見つけてみる。出来れば週に1回でいいので、町に出かけて仲間とおしゃべりをしたり、体操教室で一緒に身体を動かしてみるなど、自分がやりたいと思えることをみつけて挑戦します。こうして、「出来た」という成功体験を積み重ねていきます。
成功体験は身体にも心にも,肯定感をもたらします。自信を取り戻させてくれます。自分に自信を取り戻すことで、不安も和らぎます。こうして心も身体もしなやかになります。
誰もが今までに起こったこと、つまり過去は変えられませんが、未来は変えられます。考え方や生活習慣も変えられます。
これからの人生を自分らしく豊かに過ごしたいと思うならば、小さなことから一つずつ繰り返しながら積み重ねて、心と身体の健康を獲得してみましょう。