ロコモとは運動器(骨、関節、筋肉など、人間が自分の意志で動かせる身体の部分)の障害によって歩行移動能力が障害されることを大づかみに表現するために日本整形外科学会によって2007年に提唱された新しい概念です。
その中身は最初7つのロコチェックでロコモの疑いありとされたらロコトレと称される2つの運動(開眼片脚起立とスクワット)を行い、足腰を鍛えようというものでしたが、2013年にロコモ度テストという3つのテスト(立ち上がりテスト、2ステップテスト、ロコモ25(アンケート))でチェックして、3段階のロコモ度に応じて対策を講じようという内容が付け加えられました。
ロコチェックが現時点でロコモであることをチェックするためのツールであることに対し、ロコモ度テストは自分の足腰の能力が年代相応かどうか調べることによって、将来ロコモになる可能性の有無を推測するためのツールです。
ロコモ度テストは、立ち上がりテスト、2ステップテスト、ロコモ25の3項目からなり、そのテストの結果によりロコモ度1,2,3のいずれかのカテゴリーに該当した場合の対処方法が提示されている。
注:詳しいことは日本整形外科学会かロコモ チャレンジ!推進協議会のHPをご覧ください。
https://locomo-joa.jp/
では何故このような新しい概念が必要となったのでしょうか。それには3つの理由があります。まず大前提ですが、①我が国が急速な勢いで少子超(あるいは超々と言っても過言ではありません)高齢社会を迎え、財政的にも社会的にも高齢者問題を何とかしなければならないということが挙げられます。
また介護保険を採り上げてみると、②運動器の障害を抱える高齢者が脳梗塞や認知症・老衰よりも多いこと(約1/4)、③その割には運動器の障害に対する社会的認識が追い付いていないことがあげられます。
加齢が原因とは述べられていませんが、運動能力は50歳代になるとかなり怪しくなってきますので、ロコモ度テストではそろそろ半数の方が問題ありになります。ただロコモ度テストで引っかかっても、直ぐに治療対象になる病気になったわけではありません。病気というからには、痛みがあったり、機能障害が日常生活の妨げになるぐらいのことがある筈でしょう。
そこでロコモ関連疾患という一群の疾患がロコモの先に立ち現われて来ると説明されています。それらには下肢の変形性関節症、腰部脊柱管狭窄症を含めた腰椎症、骨粗鬆症と関連骨折などが挙げられます。
人間は直立二足歩行をしていますので、立ったり歩いたりする時は下肢に負担が掛かります。そこで長寿社会の現在、膝関節や股関節が曲がってきたり、ずれたり、軟骨が磨り減ったりしたために、痛みや機能障害が現われることがあります。中でも股関節は脚と骨盤の繋ぎ目にあって、動かすのに大きな力が働きます。またそのため股関節症は痛みが強いという特長があります。
色々とカタカナが出てきて大変ですが、フレイルについても一言お話しましょう。フレイルとは平たく言うと加齢による心身の虚弱ということになります。
従って運動器の障害を表すロコモは、一部で身体的フレイルとも言われていますが、実は先ほど述べましたようにロコモは50代で既に現れてきます。ロコモはフレイルと言われる前の世代で気付いて、鍛え甲斐のある運動器から加齢現象を予防しようというわけです。
現在、平均寿命と健康寿命との間には男性で9年、女性で12年ぐらいのギャップがあると言われています。ロコモもフレイルもこのギャップを埋めて元気で人生を過ごしていただきたいという願いが込められているのです。
健康寿命は幸福寿命の必要条件です。