動き始めた時に痛むとき(始動時痛・運動開始時痛)
関節は、軟骨があるためスムーズに動きます。しかし、負担がかかると軟骨が少しずつ壊れていきます。
特に日本人に多い
臼蓋形成不全(
寛骨臼形成不全)に起因する股関節症の場合、少ない面積(臼蓋)で脚を支えないといけませんのでより負担がかかります。
軟骨がすり減り負担がかかりはじめた状態は、自転車を放置しておくと油が切れて、動かし始めはキシムような音がしますが、しばらく使い、油が回ると音がしなくなるのと同じ状態です。この現象と同じように軟骨が少し磨耗した状態の場合、油(関節液、滑液、関節内の水)がきれていますので運動を始める最初に痛みが伴います。このことを運動開始時痛と言います。しかし歩き出して油が行き渡ると痛みがなくなります。もちろん、病期の状態(すり減り具合)が進行するといくら油をたしても追いつきませんので常に痛みを伴うようになります。
また、股関節部の痛みだけではなく、太もも(大腿)や膝の痛みで始まる場合があります。
動かしていると痛む(運動時痛)
関節の軟骨がすり減りますと油がまわらなくなり、関節がスムーズに動かなくなるため、常に痛みを伴うようになります。アイススケートの時、氷が解けてなくなると滑りが悪くなることと同じです。関節は熱を持ち、腫れたり、水が溜まったりします。
跛行(はこう)(痛みのある股関節をかばうように歩くこと、一般には「びっこ」と呼ぶこともあります)
跛行が起こる原因として、筋力、脚の長さの差(脚長差)、痛み、関節の動き具合などにより生じます。従って、手術的な治療を含め跛行をなくすためには、それらの原因を全て正常にする必要があります。表的な跛行としてトレンデレンブルグ跛行があります。
片脚で立った際、中殿筋(股関節を外に広げる筋)の筋力が正常であれば筋肉が収縮しますので、反対側の骨盤が持ち上がります。一方、股関節が悪い人の場合中殿筋の筋力が減っていますので反対側の骨盤をあげることができなくなり、歩行時に骨盤が落ちて見えるようになります。
両側に股関節脱臼がある場合、両脚にトレンデレンブルグ現象が起こり、骨盤が前に傾いて出尻の状態になりアヒルが歩いている状態に似ていますので、アヒル跛行と呼びます。
見かけ上の短縮
真の脚の長さは正確なレントゲンを撮らないとわかりません。よく脚の長さが違うと言われますが、実際は姿勢の問題で骨盤が傾いていたり、股関節の動きが悪くなったためや、背骨の問題などにより骨盤が傾いているため見かけ上短く見えていることがよくあります。
一般的に股関節が悪くなる人は、股が開かなくなりますので脚が内側に向いてしまいます。医学的には、
内転拘縮と呼びます。また、脚が伸びなくなる(屈曲拘縮)こともあります。これらの場合、見かけ上脚が短く見えます。
さらに、立つためには内側に向いた膝を真っ直ぐにしようとしますので、膝は内側にくの字(外反膝)になり、膝の内側の靱帯が伸びたり膝の外側の軟骨がすり減り、膝痛も起こります。その上、足首にも影響を与えます。
また、脚の長さに差がでると反対側の股関節や背骨にも悪い影響がでてきます。
股関節症の自己診断(股関節に何か違和感や不安を感じている人は次のチェックをしましょう)
- 普段歩くのが嫌(おっくう)になった。
- 横座り、ぺちゃんこ座り(トンビ座り)をする癖がある。
- 歩く際、左右の脚の出方が違う。
- 歩いたり、股を動かすと、太ももから膝の間に違和感を感じたり痛くなる。
- 腰痛・膝痛が起こる。
- 姿勢が悪いと言われる。
- 歩き方がおかしいと言われる。
- 歩く時、肩が上下に揺れる。
- 横向きで寝る習慣がある。
- 脚の長さが違う感じがする。
※ここでは、病気や症状のほんの一例しか掲載していません。少しでも股関節症が疑われ、まだ受診していない場合には、なるべく早く整形外科に行くことをおすすめします。