Hip Joint コラム

股関節に関する有識者の方々が、様々な切り口で股関節をコラム形式で解説します。

  
第9回 Hip Joint コラム 2016.6.01

「股関節のインプラント治療」

忽那龍雄先生 写真 画像
忽那 龍雄
元佐賀大学医学部
地域保健・老年看護学教授

 私達の身体には、二つ以上の骨が連結して可動性を有する関節が184個も存在しています。その中でも股関節は、骨盤の骨と大腿の骨とで構成されて、運動の自由度が大きく、大きな荷重量を支えることができる「かなめの関節」です。この「かなめの関節」には変形性股関節症、リウマチ股、大腿骨頭壊死症、などの30数種類の疾病が発症します。これらの疾病によって、構造的な破綻が生じると、痛みや立ち上がり、歩くなどの日常の活動が制約されます。さらには、進行に伴って仕事、レジャーなのど社会参加ができ難くなります。痛みが安静にしても消失せず、歩行が家の周囲程度しかできないとか、仕事ができないとか、さらにQOL(生活の質)が著しく悪化した場合には、人工材料を組み合わせて作成した股関節のインプラント治療(人工股関節全置換術、写真a及び写真b)、などの手術療法が適応になります。
 股関節のインプラント治療は、除痛と支持効果に優れ、総合的機能を健常時の8割程度に回復させることができます。しかし、歯のインプラント治療が普及するに伴い、インプラントの弛み・破折のみではなく、副鼻腔内迷入・感染や神経麻痺などの偶発症が増加して、インプラント治療の安易な選択に対しての注意が報道等でも喚起されているところです。インプラント治療における合併症・偶発症は、人工股関節置換術後においても、少なくありません。また、インプラントには、「ヒト」に較べれば、遥かに短い寿命があります。
 股関節は、例え、構造的適合性が悪くなった場合でも、力学的適合が良くなるように自らの力で再構築して、痛みを軽減させることも少なくありません。インプラント治療は、再構築能力が高い股関節では、レントゲン写真上の変化や痛みが持続するということのみで、安易に選択するのではなく、関節に加わる負担を軽減させる種々の保存療法を十分に行ってもなお夜間痛(安静時の痛み)が持続することと、日常の活動や社会参加の状況を総合的に検討して選択すべき治療法です。

股関節治療のインプラントA 画像

股関節のインプラント治療b 画像


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