Hip Joint コラム

股関節に関する有識者の方々が、様々な切り口で股関節をコラム形式で解説します。

第42回 Hip Joint コラム 2019.03.01

中間管理職から見た股関節手術を
取り巻く教育の現状

医療法人社団 松下会 白庭病院 関節センター長 岩切健太郎先生
岩切健太郎
医療法人社団 松下会 白庭病院
関節センター長

 産科、小児科に始まり、最近では外科医の人数が減少傾向にある昨今、厚生労働省のデータによると整形外科医師数は2016年 2万人強とされ、医師全体の7.0%を占めているが、世代別の整形外科医構成割合は60代7.1%、50代8.0%、40代7.8%、30代 6.6%であり、近年、減少傾向にあると推測される。
 私が医師になった頃、「一人前の外科医になるには10年以上かかる!」と上司に言われ、一人前の股関節外科医を志して、はや18年が経過した。知らぬ間に中間管理職となり、若い医師の研修や、他施設からも手術見学に来院して頂くようになったが、若い医師を取り巻く環境や若い医師の仕事に対する意識は急激に変化してきていると感じる。  
 日々の我々の臨床で行うことは、的確な診断に加え、手術、術前検査に周術期管理、術後の経過観察、万が一のトラブル対応であるが、最も大切な仕事は手術であろう。綿密な計画の上に、正確な予定通りの手術を行うことができれば、必然的に周術期や術後は良好な経過をたどる。そのため、常に最新の知識や技術の習得が必要である。本財団や多くの整形外科関連学会も、若い医師の教育のため、ビデオセッションやラボでの医療技術修練の機会を持つよう努力して頂いているが、マンツーマンでの指導が最も多いのが現状であろう。「失敗は成功のもと」ということわざがあるように、失敗から学ぶことは非常に多い。しかし、手術に携わる身として失敗できないし、近年、ますます失敗できない世の中となっている。
 中間管理職の我々世代は、厳しく、激しく、時に優しく、忍耐強く、長時間に渡り、指導されてきた世代であると自覚しているし、そのおかげで現在、患者様により良い医療を提供させて頂いていると思う。しかし、この教育、指導を現状の若い世代に引き継ぐことはできるだろうか?若い医師の仕事に対する意識の変化、パワハラ、国策である働き方改革関連法など、考慮しなければいけないことが多くある。そんな中、優秀な若手医師、熱心な若手医師も身の回りに多くいることは実感している。今の時代に合った外科医教育システムの構築が望まれる。我々が年老いた時にでも、安心して任せられる医師を一人でも多く育てるために。ドラマ”ドクターX”の大門美知子のような「私、失敗しないので」という医師を一人でも多く育てられれば良いのだが、。


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