股関節に関する有識者の方々が、様々な切り口で股関節をコラム形式で解説します。
人間は図1の如く、4つ足動物から、10億年かかり、2本足で立って歩けるようになりました。同時に、人間は腰痛に苦しまねばならない宿命を負う事になりました。
赤ん坊が3か月で首が座り、這い這いをし10 か月で、2足歩行になります。この10億年の進化を赤ん坊はたった10か月で経過します。一方、 高齢者が寝たきりになり、歩けなくなるのはたった数週間です。4つ足動物から次第に体幹が起立していくためには、股関節が屈曲90度から屈曲0度に、完全に伸びる必要があります。そのためには脊柱起立筋は重要です。
しかし、骨盤が上向きに回転するには大殿筋、足部が地面に直角に立つために下腿三頭筋、また膝が真直ぐに伸びる為には、大腿四頭筋など の筋肉が必要です。さらに骨盤が必要以上に上向きにならない様に、腸腰筋の力も必要で腰椎運動のバランスに重要です。以上、体幹の運動、言い換えれば腰を強くするには脊柱起立筋のみならず、骨盤から股関節・下肢の筋肉の訓練が大変重要であります。しかし、人間は日常生活で座っていることが多く、この姿勢が大変腰痛と関係してきます。つまり、図2の様に腰を丸めて座るような姿勢は骨盤が後傾し、股関節が屈曲し、太ももの裏の筋肉(ハムストリングス)を硬くし腰痛原因になります。因みに、ハムストリングスとは大腿二頭筋、半膜様筋、
半腱様筋という複数の筋肉からなります。
この太ももの裏の筋肉の柔軟性を簡単に知ることが できます。
①足を腰幅に位に広げてたちます。
②膝を伸ばした状態で息を吐きながら、転倒に注意してゆっくり腰を前屈します。手の指先が床につけばハムストリングスが柔らかく正常、指先が床から15㎝以上離れている場合は硬く異常、指先が床上から15㎝未満の場合は要注意です。
このハムストリングスが硬くなっていることが、股関節を伸ばし、骨盤を前傾しにくくし、腰への負担が大きくなり、腰痛が発生しやすくなります。本来柔軟に動く股関節が動かないと、それを補うために関連した他の部位が代わりに動き、股関節と連携している腰や臀部の筋肉が緊張します。その結果、腰椎に負担がかかり腰痛が発生します。股関節の周囲の筋肉を柔軟にしておく必要があります。そもそも股関節と腰椎には運動学的にも密接な関係があり。この考え方はヒップ・スパイン症候群につながっていきます。