股関節に関する有識者の方々が、様々な切り口で股関節をコラム形式で解説します。
週のうち二日、地域の基幹病院において骨折治療に携わっています。以前に比べて労災事故と交通事故による骨折が減少し、代わりに高齢者の転倒に伴う骨折が増加しています。 高齢になると若い時と比べ骨が弱くなってきます。骨の強度の指標である骨塩量が若いころの70%以下となると骨粗鬆症と呼ばれ、転倒などの比較的軽い外力で骨折するリスクが高くなります。骨折はいろいろな部位に発生しますが,股関節の一部である大腿骨の近位部に生じると,歩行能力が損なわれてしまいます。この大腿骨近位部骨折は、骨折の発生部位によって頚部骨折と転子部骨折に分けられます。もう一度歩けるようになるためには、可能な限り早期の手術治療が必要です。日本整形外科学会骨粗鬆症委員会による集計では、1998年には35.000件だった大腿骨近位部骨折が2015年には92.000例に増加しています。また、この骨折の好発年齢は85-89歳であり、日本人女性の平均寿命とほぼ同じなのです。高齢者骨折の問題点は、いくつかの数値で報告されています。まずは、1/3と1/5です。これは海外のデータではありますが、50歳以上の女性が生涯骨折する確率は3人に1人であり、50歳以上の男性の場合も5人に1人と報告されており、だれにとっても身近な問題であることがわかります。次に50%と8-24%という数値です。大腿骨近位部骨折になると寝たきり状態になったり、手術を行っても歩行能力が低下してしまうケースをよく見かけます。骨折して1年たっても骨折前の歩行状態に回復しない割合が50%なのです。また骨折して1年以内の死亡率は8-24%であり、5年生存率は癌よりも低いとの報告があります。 骨折の治療成績を今以上に向上させることに加えて、この高齢者の骨折を予防することが大切になります。まず50歳を超えたら骨折予防のため以下の3つの点を心がけてください。
日本股関節研究振興財団の市民フォーラムや各地域で行われる市民講座に参加して勉強することも大切です。