股関節に関する有識者の方々が、様々な切り口で股関節をコラム形式で解説します。
平成27年1月、「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」が施行されました。医療費助成をうけられる「指定難病」は現在330あります。大腿骨頭壊死症は、私たちの股関節を作っています大腿骨の骨頭が壊死する病気ですが、大腿骨頸部骨折やダイバーに起こる潜函病など原因がはっきりわかっている症候性大腿骨頭壊死症と違い、壊死が生じる原因が明確でないものを特発性大腿骨壊死症と言います(図1)。
日本では、年間約3000名程度の新規患者さんが発症していて、通院治療を受けている患者さんは2万人以上と推定されています。特発性大腿骨頭壊死症は、膠原病などでステロイド薬を1日平均15mg以上服用したことがあったり、お酒を日本酒なら2合以上毎日飲んでおられる方に発症することが多いのが特徴で、何らかの理由で大腿骨頭に行く血行が一時的に遮断されてしまうため骨が壊死してしまうと考えられています。骨が壊死した時点では自覚症状はほとんどありませんが、壊死した大腿骨頭は次第に圧潰してくるため、股関節の痛み、股関節可動域制限、歩行障害をきたしてきます。壊死した範囲や圧潰の程度はレントゲン検査やMRI検査で評価可能です(図2)。両側の大腿骨頭に壊死を起こすこともありますが、一度起こった骨壊死が次第に広がっていくことはほとんどありません。残念ながら、自然に治癒することはほとんどありませんし、現在も壊死した骨を再生させる治療はありません。よって、松葉杖をついたり、長距離歩行や階段昇降を制限して股関節になるべく体重や衝撃を加えないように注意するしかありません。疼痛が強く歩行障害や日常生活に支障をきたした場合は、骨きり術や血管柄付き骨移植、幹細胞移植などの手術治療を行うこともありますが、一般的には人工股関節置換術が行われます。
特発性大腿骨頭壊死症は、30?40歳代の若い患者さんが多く、人工股関節インプラントの耐用年数にも不安があります。特発性大腿骨頭壊死症は自覚症状がないかほとんどない発症早期に診断し、骨頭の圧潰の進行を如何に食い止めるかが重要なポイントです。専門の整形外科医に受診していただき、なるべく早く検査を受けられることをお勧めいたします。