股関節に関する有識者の方々が、様々な切り口で股関節をコラム形式で解説します。
股関節とは図1の④のように身体の中央に骨盤の受け皿の寛骨臼(かんこつきゅう)と大腿骨頭(だいたいこっとう)図2から成り立っています。正常な場合は、大腿骨頭の部分が軟骨で覆われ、寛骨臼の中にはまりそれを周囲の筋肉がしっかり支えています。そして、大変広い可動域を持ち、ぐるぐるまわすこともできます。同時に、上半身の重さを支え下半身の動きに対応するという沢山の機能を持った関節で、荷重関節といいます。
この股関節と似ているのが肩関節です。骨頭と受け皿の組み合わせは同じですが、接触面が股関節と比べると30%程度で、腕はそこからぶら下がっています。つまり、身体を支えるというよりも、自由自在に動かし使われる関節です。
股関節のこの役割は、十億年かけて人間が四ツ足歩行から二足歩行に形態が変化していく中で生じてきたものです。かなりの動きの自由度と身体の荷重に対応していくために、股関節は精巧で、それを取りまく筋肉等の対応も整えていかねばなりません。因みに、どの位の負担がかかるかというと、私達が両脚で立っている場合は両股関節にはそれぞれに体重の2分の1の重さがかかってきます。それが、片脚で立つと体重の4分の3の体重がその片脚の股関節にかかります。一方歩行時には加速度が加わるため体重の3~4倍の合力に耐えながら運動しなければなりません。つまり、体重が60Kgの方なら片脚起立では45kg、歩行時には加速度が加わり180㎏~240㎏(3-4倍)、階段昇降時には360㎏~420㎏(6~7倍)、跳躍する際は、実に720kg(12倍)に跳ね上がります。従って、体重10kgの増加は歩行時には30~40kgの負荷増になります。このように、股関節は私達の活動の要、それ以上の肝心要の部位なのです。 この肝心要の股関節を長く健康に維持するためには、運悪く股関節に不具合が生じてしまった方にも、体重を減らし負担を軽減することと、同時に股関節周囲の環境を整えることが重要であります。つまり、過度な負担をかけずに動かしていく運動、体操等を行うことです。それには、水中運動、自転車こぎも良いでしょう。また、大きなボールを使ったボール体操、床に寝て関節、筋力のトレーニング、ストレッチ、リラクゼーション等を少しでも良いので継続することです。
この肝心要の股関節の役割を、多くの方々に理解して頂きたいと思います。股関節は健康寿命延伸の要の関節だからです。