HJFJ第1回股関節海外研修助成報告

HJFJ第1回股関節海外研修助成報告

本村悟朗(九州大学整形外科)、高窪祐弥(山形大学整形外科)、福島健介(北里大学整形外科)

 第1週目はUCSF(University of California, San Francisco)を訪問しました。UCSFの整形外科はParnassusにあるMedical center, Zuckerberg San Francisco General Hospital(FacebookのZuckerbergが70万ドル寄付して名前がついたそうです)、Mission bayの3カ所で手術や外来を行なっており、今回の訪問では主にMedical centerにて手術見学をしました。米国では入院期間が短いとは聞いていましたが、Bilateral THAも二泊で退院で驚きます。全米Top10にランキングされている整形外科のようですが、それでも生き残るために積極的にdirect anterior approachを採用しており(患者から指定されることもあるようで、やらないと逃げられるそうです)、想像以上に縫合も丁寧でした。局麻やエピネフリンを混ぜたカクテル注射を関節包周囲にしており、THAの術後数時間後にはrecovery roomでにこにこSLRができていました。Clinical ProfessorのDr. Biniは、このような短期入院診療をさらに発展させるために、PTを含めたNetworkを形成して積極的に取り組んでいました。うち1日は、今回UCSF整形外科を紹介してくださった長尾正人先生(こちらではリハビリテーション医として働かれています)がいらっしゃるZuckerberg San Francisco General Hospitalを見学しました。ここはいわゆる外傷センターのようなところで、整形外科の中ではtraumaチームが入っているとのことでした。長尾先生には、外来のシステムや手術前からの患者さんの動線を見学させてもらい、大変興味深かったです。病院内ではほとんど写真が撮れませんので、開いていただいた食事会の写真を添付します。左側手前から二人目がChairmanのDr. Vail, 右側手前が長尾正人先生です。

第1回股関節海外研修助成写真①

 第2週目はSalt Lake Cityに移り、Univ. of Utahを訪問しました。HostであるAssociate ProfessorのDr. Stephen Aokiには本当によくしていただきました。初日にはSalt Lake City の空港まで迎えに来てくださり、そのままご自宅にご招待下さいました。折しも全米が熱狂するSuper bowlの日で、その特別な1日を体感させていただきました。Univ. of Utahはとにかくキャンパスが広いのですが、Medical centerとは別にOrthopaedic centerがあり、外来、手術室、ラボがすべて一つの建物に入っていました。手術見学はDr. Aokiの股関節鏡を5例、Dr. Chris PetersのPAOを2例など、多くの手術を見学しました。Dr. Aokiの手術はすごいの一言で、まさに股関節鏡のスペシャリストでした。彼は技術がある上に手術適応もしっかりしており、さらに患者への説明・対応(clinicも見学させていただきました)を含め、素晴らしかったです。Dr. PetersのPAOも、アメリカでここまで上手に骨切りする人がいるんだ!と驚きました。ちなみに、PAOも二日入院とのことで、短期入院にも慣れてきましたがびっくりします。水曜日の午後にはDr. Aokiの計らいにより、股関節鏡のcadaver trainingをさせていただき、大変貴重な体験をさせていただきました。股関節鏡を学びたくて来た彼のFellowたちにとっても、Dr. Aokiに直接指導してもらえる、本当にいい環境なんだなと思いました。写真左から2番目がDr. Aokiです。

第1回股関節海外研修助成②

 最終週はSan Franciscoに戻り、Stanford Universityを訪問しました。ここでも、HostであるProfessorの Dr. Marc Safranには大変よくしていただきました。手術見学のみならず、外来見学を申し出ると快く受けてくださったりと、flexibleに対応いただきました。全米から症例が集まってくるという、人工股関節再置換術症例の見学ができたことも有意義でした。また、クリニックには感染症専門医が常駐しており、感染症例に対してともにmanagementをおこなえる体制をとっていることに驚きました。我々のプレゼンにはChairmanのDr. Maloney とProfessorのDr. Goodmanにもお越しいただき、これまでよりもやや緊張感のあるプレゼンを経験でき、活発な質問もいただきました。総じてStanford brandを感じることができましたし、ここに来れてよかったと思っています。写真はProf. Safran(右)のクリニックで撮った一枚です。

第一回股関節海外研究助成③

 この3週間は、我々にとって本当に有意義なものになりました。特に、今回はすべての施設で股関節鏡に触れ、まだ確立されたstandardな術式はないこと(術者の技量・哲学に強く依存していること)、第一線の人たちも試行錯誤でやっていること、を感じることができました。やはり、長期成績の答えを持っていないことと、適応等で違うと感じることも多々ありましたが、それぞれが噛み砕いて取り入れていければと思っています。
最後になりますが、この機会を与えていただいて、本当にありがとうございました。この場をお借りし、理事長の別府諸兄先生をはじめ、多くの先生方に深謝申し上げます。

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